アトピー性皮膚炎とはダニ、カビ、花粉などの環境物質が吸入もしくは皮膚から直接体に入り、アレルギーが生じて、痒みや皮膚炎を起こす疾患です。 |
犬ではⅠ型アレルギー(80%ほど)、Ⅳ型アレルギー(10~20%?)が関与している。 |
環境因子によって生じるので、避けることはできず、完治する病気ではありません。症状をおさえつつ、うまく付き合っていく病気です。 |
アレルギ-とは、細菌やウイルスなどの病原体から身体を守るための生理機能です。免疫機能が異常をきたし、通常は生体に害が少ない抗原に対して過剰な免疫反応を起こす疾患です。
アレルギーの発生には遺伝性、抗原に対する過剰な曝露、生活環境などが考えられています。
Ⅰ型アレルギー | IgEという抗体と肥満細胞が中心的に働き、ハウスダストなどの抗原に反応し、ヒスタミン、セロトニンなどの生理活性物質を放出します。これにより、血管拡張や血管透過性亢進などが起こり、浮腫、掻痒などの症状があらわれます。この反応は抗原が体内に入るとすぐに生じるため、即時型過敏と呼ばれます。 |
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Ⅳ型アレルギー | 抗原と感作T細胞によって起こります。感作T細胞が生理活性物質を遊離し、周囲の組織傷害を起こします。反応に24~48時間ほどかかるため、遅延型過敏症と呼ばれます。 |
食物アレルギーは食事、アトピー性皮膚炎は環境物質(草、花粉、ハウスダストなど)により生じるアレルギーです。これらの疾患は予後、治療法も全く異なるために、しっかり鑑別する必要があります。
食物アレルギー | アトピー性皮膚炎 | |
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目、口、背中の痒み | あることがある | まれ |
1歳未満からの痒み | あることがある | まれ |
1年中の症状 | 多い | 季節性。慢性化すると1年中 |
消化器症状 1日3回以上の糞便回数 |
あることが多い | なし |
ステロイドの反応性 | 65%が反応 | 85%が反応 |
除去食試験 | 痒み改善 | 痒み改善なし |
アレルギー検査 | 血液を採り、検査会社でIgE検査(Ⅰ型アレルギー)、リンパ球反応検査(Ⅳ型アレルギー)を両方行うことで、 食事アレルギー、アトピー性皮膚炎を診断し、どの物質がアレルギーを起こしている可能性が高いか判定します。 |
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除去食試験 | アレルギーとなるものを実質含まないごはんを食べさせることで、痒みの原因が食事性かを判定します。 |
メリット | デメリット | |
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アレルギー検査 |
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除去食検査 |
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アトピー性皮膚炎のワンちゃんは皮膚のターンオーバーが早くなり、脂質やケラチンがうまく作れず、角質層のレンガとモルタル構造が崩れ、皮膚のバリアー機能が弱ってしまいます。すると、
①ドライスキン | 水分が皮膚から逃げる |
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②アレルゲンが体に侵入しやすくなる | |
2次感染が生じやすくなる | 細菌や酵母菌などの常在菌が皮膚に定着し、増殖しやすくなります |
これにより、さらに皮膚症状が悪化していきます。この悪循環を断ち切るためには、皮膚バリア機能を高めるためのスキンケアが重要となります。
アトピー性皮膚炎の治療法はいくつかあります。それぞれにメリット、デメリットがあります。
治療法 | メリット | デメリット | 有効率 |
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ステロイド |
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ほぼ100% |
抗ヒスタミン剤 |
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約30% |
免疫抑制剤 |
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約70% |
減感作療法 |
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約70% |
インターフェロン療法 |
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|
約70% |
ステロイド治療 |
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抗ヒスタミン剤 |
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免疫抑制剤 |
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減感作療法 |
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インターフェロン療法 |
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シャンプー、スキンケア | 身体に付着したアレルゲンを除去するため、界面活性剤を使用していない、低刺激のシャンプーをこまめにしてあげる必要性があります。また、前述したように、アトピー性皮膚炎は脂やセラミドなどが不足することで、ドライスキンになり、皮膚バリアーが低下しています。これらを補うためにセラミドや保湿剤により保湿する必要があります。 |
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食事、サプリメント | DHAやEPAといった不飽和脂肪酸は皮膚の炎症を緩和し、皮膚の機能強化を補助してくれることで、体質を改善させてくれる可能性があります。また、保湿成分のセラミドを入れることで、皮膚のセラミド産生を補助する効果を期待します。 |
ノミ予防 | 皮膚のノミ感染、細菌感染、マラセチア感染などはアトピー性皮膚炎の増悪因子と考えます。可能な予防はアトピー性皮膚炎のワンちゃんにはやってあげるべきです。 |
掃除、空気清浄機 | 家でアレルゲンを減らせるもっとも簡単な方法です。 |
アトピー性皮膚炎は治る病気ではありません。したがって、症状をおさえ、うまく付き合っていく病気となります。 |
アトピー性皮膚炎という病気である以上、ワンちゃんによっては完全にかゆみや赤みをなくすことができないこともあります。以前よりかゆみや赤みが減らしてあげることができれば、愛犬も楽になり、よしとする考えも大事になります。それ以上の症状改善をもとめ、治療を進めることによって愛犬の体に負担がかかり、よけいに愛犬を苦しませてしまうかもしれませんし、飼い主様ご本人のご負担にもなります。 |
アトピー性皮膚炎という難しい病気を理解し、上手に付き合っていくように心がけることが肝心だと考えます。 |