暑くなる季節に増えてくる病気として、皮膚の病気があります。皮膚の病気と一言でいっても、原因は様々です。
細菌やカビによる感染症、ノミやダニなどの外部寄生虫感染症、アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、ノミアレルギーなどのアレルギー疾患、副腎皮質ホルモンや甲状腺ホルモン、性ホルモンや成長ホルモンなどのホルモンバランスの乱れ、その他まれではありますが、自己免疫疾患、腫瘍など多岐に渡ります。どの病気も色々な症状を示し、見た目だけで、原因を判断することができません。また、いろいろな原因が複合的に生じていることも多いため、診断をするのに、繰り返しの検査や、治療薬を実際に使用して、効果を評価(治療評価)をすることで、他の原因を除外し、しぼっていく(除外診断)ため、場合によっては診断や治療に時間がとてもかかることがあります。
また、原因によっては、症状と一生のお付き合いが必要なこともあります。また、治療方法がひとつではなく、さまざまな選択肢が存在することもあります。
飼い主様、ワンちゃん、ネコちゃんに最も適した治療法を一緒に相談しながら、探していきましょう。
皮膚病を起こしている原因を調べる、もしくは除外する検査になります。
抜毛検査 | 身体の毛を抜いて、顕微鏡で検査します。毛の状態を調べることで、抜け毛の原因を探したり、カビや毛包虫、シラミなどがいないかを調べる検査です。 |
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皮膚掻爬検査 | 鋭匙というもので、皮膚を削り取り、顕微鏡で検査します。ニキビダニやヒゼンダニといった寄生虫を調べる検査です。 |
細胞検査 | 皮膚の表面にセロハンテープやガラスを押しつけ、そこに付着した細菌や細胞を染色液で染め、顕微鏡で検査します。主に炎症の細胞が出ているか、細菌やマラセチア菌がいないかを調べます。 |
真菌培養検査 | カビがいるかを調べる検査です。 |
細菌同定・感受性試験 | 皮膚病を起こしている細菌がどういった菌で、どのお薬が効くのかを調べる検査です。最近では抗生剤の効かない、多剤耐性菌が人医で問題となっています。動物の体表で作られてしまった耐性菌は人にも移行しますので、しっかり効くお薬を、効果的な期間投与することが必要となります。 |
皮膚生検・病理検査 | 皮膚の自己免疫疾患や腫瘍の場合、皮膚の一部を切り取って、組織検査を行う必要があります。通常は局所麻酔のみで、皮膚を小さく切り取り、2針程縫います。部位や性格などにより、鎮静や全身麻酔が必要になることもございます。結果は、検査機関に提出するため、後日報告になります。 |
アレルギー検査 | 食物アレルギー、アトピー性皮膚炎の原因となる食物、もしくは環境物質(花粉、草、ハウスダストなど)を調べる検査です。血液を採取し、外部の検査センターに送ります。2種類の検査が必要となるため、費用もかかってしまいますが、アレルギー疾患は一生のお付き合いとなるために、アレルギー疾患と診断した場合、治療前に一度検査をおすすめしています。 |
内分泌検査 | コルチゾールや、甲状腺ホルモン、性ホルモンなどを測定し、クッシング症候群、甲状腺機能低下症などを診断します。 |
皮膚検査の精度は100%ではありません。検査結果が陰性であっても、疑わしい病気であった場合、診断的治療といって、実際に数週間お薬を処方したり、治療をしてみて、その効果を判定することがあります。
除去食治療、試験 | 食物アレルギーかアトピー性皮膚炎が疑われる場合、除去食を1~2カ月続けることで、どちらかが、判定がつきます。いずれにしても治療は一生必要となることが多いため、一度、原因物質を調べる、アレルギー検査をおすすめします。 |
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ノミアレルギー | ノミに対するアレルギーを持っている場合、ノミが一匹でも感染していることで全身の痒みや皮膚炎を生じることがあります。それに対して、スポットオンタイプもしくな内服のノミ駆除薬の反応性をみます。 |
避妊、去勢手術 | 未避妊の雌犬もしくは未去勢の雄犬で睾丸が腫瘍化した場合、性ホルモンの影響で脱毛や皮膚炎が生じることがあります。この場合、血液内の性ホルモンは必ずしも上昇しないため、診断、治療のために、他の疾患を除外した後に、避妊・去勢を提案することがあります。 |